そしたら森江先生超有名人ですよ。 まあ先生の場合出版されればベストセラー間違いありませんからこのチャンスを逃す手はありませんよ～。 ロマンスグレー気取りのカツラにサングラスなんかしちゃって。 一体どこの書店にわしの本が並んでいるんだね？ですから苦情は藁山さんに言ってくださいよ！契約書にはねうちは書店に置いてもらえるよう営業努力をするとしか書かれてないんですよ。 これ以上大声出されるなら営業妨害で訴えますよ。
藁山さん独身だったそうですが男所帯にしてはずいぶんときちんと整理されてますね。 「次にただ今入りましたニュースです」「昨日町田市で起きた藁山花俊さん殺害事件で捜査本部は神奈川県川崎市に住む桐石響樹容疑者２２歳を逮捕しました」ああ…。 あなたは担当弁護士じゃないんだから。 私は…弁護士。 弁護士？おいだったら桐石助けてくれよ！あいつが人殺しなんかするはずないんだよ弁護士さん。 なあ頼むよ！弁護士さん。 赴任先でも数々の難事件を担当し見事にすべてを有罪に導いた。 君の担当事務官の高柳くんだ。
司法修習生時代に一緒に研修に来ててよく比べられていたじゃないか。 そこに文芸部の顧問として相沢先生という君にとっては恩師ともいえる先生がいた。 ざけんなよ！この野郎！桐石…！おい桐石！何やってんだお前ら！君がたびたび暴力事件を起こして退学処分になった後も何かと君の事を心配してくれていた。 先生…！？先生！相沢先生！先生…！相沢先生！しっかりしてくれよ…！先生！先生が亡くなったあと君はその小説を先生のために出版したいと思った。 ところが出来てきた本は勝手に中身を改ざんした先生を裏切るようなものだった。
加えて離婚が成立して職のない私に先生は声をかけてくださった。 なんだか先生の事を見下したみたいな偉そうな口調で。 先生今度の裁判絶対負けないでください！勝つか負けるかはやってみなきゃわからないよ。 それと担当検察官は菊園綾子という人だそうです。 先生ちょっと上着脱いでください。 え…裁判に勝つ事と背広とどう関係あるの？今度の公判は裁判員制度で行われるんですよ。 裁判員の人たちにいい印象を持っていただかないと…。 それと何より大事なのは裁判員の人たちにわかりやすく説明するプレゼン能力ですよね。
それではこれより被告人桐石響樹に対する審理を開始します。 「被告人は去る４月２２日東京都町田市南町田９丁目８番６号在藁山花俊宅を訪れかねてより恨みを募らせていた事から口論となり室内にあったバットを用い藁山花俊の頭部を３度にわたり殴打」「死に至らしめたものである」「罪名および罰状殺人。 刑法第１９９条」何か言いたい事がありますか？あ…え…べ…弁護人といたしましてはあ…被告人のただ今の発言にかかわらずあくまで被告人の無罪を主張いたします。
藁山さんってかなり整理整頓好きだったんですね。 この『アイウエオ整理術』ってこの本がね藁山さんが書いた中で一番売れた本なんだって。 その藁山さんを桐石くんに紹介したのは…？相沢先生が亡くなってから桐石さんが先生の本を出版したいって。 どうしてくれんだよ！お前が藁山を紹介したばっかりに相沢先生の小説が…！お前のせいだよ！ごめんなさい。 被害者藁山花俊氏は頭部を鈍器で殴打され死に至りました。 付着していた血液型も藁山氏と同じＡ型。
６時半頃藁山さんの家を出たという事ですがそれを証明してくれる人はいますか？どうして私が疑われなきゃいけないんです。 恩を感じる事はあっても藁山先生を恨む気持ちなどみじんもありませんよ！朝浜江里梨さん。 藁山は見本として預けていた私の絵を無断で流用して自費出版の絵本に載せたんです。 え～証人が訪ねたこんな事態も想定して証人を用意していますので藁山花俊邸の前を通りましたね？はい。 証人は被告人を藁山さんに紹介する事で被告人から恨まれていた。
被告人桐石響樹は来栖綴さん豊幌元雄さん同様死体を発見したにすぎないと？被告人を有罪だとする客観的物証もバットに付いた指紋だけです。 指紋にしても例えば被告人が死体を見て驚いて思わずそばにあったバットに触れてしまった…という可能性も考えられます。 では弁護人はあくまでも昨日と同じ主張をされるわけですね？被告人がヤケになって嘘の自白をしていると。 殴ってしまった…！バットで…殴ってしまった…！事件のあった夜被告人は焼き鳥屋で酒を飲んだ際バットで殴ったとすでに犯行を自白していた…。
あなたと桐石くんの事なんだけど以前は仲よかったんだよね？だからこそよかれと思って藁山さんの事を桐石くんに紹介したんだよね？私中学の時イジメに遭ってずっと引きこもりだったんです。 じゃあ一体誰が…？だから藁山さんの生存が確認された７時１５分から桐石くんが訪ねてくる８時までの４５分の間にとなるとその人はその後その傘どうしたのかな？駅までは差して行ったでしょうけどそのあとは捨てたんじゃないですかね。 先生は？私はもう一度桐石くんのバンド仲間から話を訊いてみる。
調味料の順番は「サシスセソ」。 事務所ってどちらですか？サシスセソと…。 裁判所の許可は明日朝一番で取りますから。 これは「協力者指紋」といって事件の関係者に指紋の提出をお願いするものです。 私たちは証言してくれっていうから裁判所来てんですよ昨日も今日も。 本日の被告人質問ですが弁護人からの要請で異例ですが「対質」という形式で行う事になりました。 裁判員のみなさんこの対質で私が述べます事は最終弁論も兼ねております。 事件のあった２２日の夜９時半頃すずかけ台駅の遺失物取り扱い所に届けられました。
それで被告人ですが被告人は事件前に藁山さんとは何回会いましたか？２回だよ。 相沢先生の小説を出版する事は電話で話が済んでたし被告人は藁山さんをはっきりと認識する事は出来ないかもしれませんね。 実は被告人が訪ねた時も来栖綴さんが訪ねた時もその真犯人とは誰なのか？私は「バットで殴ってしまった」と言ったんですよ。 何が言いたいんです？藁山さんはこれまでなぜ被告人とだけは会おうとしなかったのか？それは被告人を暴力的な人物だと思っていたからでしょう。 そして被告人はあなたが身代わりになっている事に気がつかなかった。