新太郎を?どんな様子でした?あの子。 この穏やかで寡黙な飯屋の亭主弥助が何者かに突然惨殺された久しぶりだな弥助。 うあ…!うわあっ!!♪~父っつあん…お父っつあん!お父っつあん!お父っつあん…!お父っつあん…!新太郎…。 新太郎お前もうしばらくおっ母さんのところにいておあげ。 いけないよ新太郎。 ひょっとして今出て行ったあの子が?新太郎です。 一昨昨年絹問屋の結城屋さんへご奉公に…。 密偵?北町同心の手先を務めていたというのか?あの弥助が。
馬喰町の公事宿へ?はい。 私がまだその道に入ったばかりの頃この事実を告げるおりんの気持ちは複雑だったはずであるなぜならばおりんもまたかつては稀代の大盗賊雲霧仁左衛門の情婦だったからである公事宿とは訴訟の為に江戸へ出てきた者たちを宿泊させる専門の宿でその多くが日本橋馬喰町に軒を並べていた遊山の旅でもあるまいに真っ昼間から豪勢だな。 連中に任せておいたら長引くだけ長引かされて宿代から飯代墨代紙代礼金までむしり取られるのがオチだ。
とっくに死んだんです巽の政五郎は。 …新太郎。 あんたがこれで私を見逃すはずがない!きっと新太郎にも手を出すに決まっている。 あの子だけには指一本触れさせない!!このアマ…!おっ母さん!!来ちゃいけない!新太郎。 やめて!!御用だ!御用だ!南町奉行所だ!巽の政五郎とその一味神妙に縛につけ!一同の者面を上げよ。 その方ならば政五郎の顔を見知っているはず。 この者巽の政五郎に間違いないな?当時北町同心の密偵であった弥助と通じ一味の動きを報せていた。