杉下さん小劇場にも詳しいんですか？まあロンドンで暮らしていれば演劇は生活の一部ですからね。 ロンドンで当たって日本で凱旋公演やるっていう。 生意気で業界中の嫌われ者なんて山路が言い出したもんだからね週刊誌やなんかもそれに乗っかってバッシングを始めたってわけ。 評論家？なんのだ？玄関の鍵が開いていて呼んでも返事がないので入ってみたら山路さんが倒れていたと。 「評論家・山路康介さん殺害される」おやおや先日角田課長が話してた人じゃありませんか。
「主演の学芸会演技で最低の映画に」「Ｂ級グラドルに女優を名乗る資格なし！」そうかなぁ…。 あれ～？なんで特命係がいるんですかねぇ？警視庁捜査一課の伊丹です。 人を褒める記事じゃ駄目なんですかね？「大倉奈津謎の転落死！」な…。 「女優の大倉奈津さんが自宅のベランダから転落して死亡した」一時ひどいバッシングに遭ってさ。 ちょうど人気が出始めた頃にドラマで主演女優のライバル役に抜擢されたんだけどそれがね親友の恋人を奪う役で。
え？それにご意見番の山路さんの名前があれば記事の真実味も増しますからね。 これがバッシングの引き金ですか。 ２月５日夜９時から１０時どこで何をしていたのか話してもらえませんか？娘さんへのバッシングが始まったんでしたね。 世間の悪意に火をつけて文化人面をしている山路が私は心底憎かった。 警察官として言ってはならない事ですが私個人としては殺された山路さんより大倉の方に同情を禁じ得ません。 奈津ちゃんが子供の頃に奥さんが亡くなって大倉さん男手一つで大事に育てていたのにこんな事になるなんてねぇ…。
おや…あのティーカップ持ち手のデザインがアールデコ様式ですねぇ。 この芝居の設定はロマン主義絵画全盛の１９世紀初頭ですからあのデザインはまだ存在しないはずですがねぇ。 衣装や他の小道具はちゃんと時代考証をやっているのにティーカップだけどうしたのでしょう？刑事さんあれは間に合わせに使ってるだけですよ。 今小道具がそれなりのものを準備してます。 なんで僕のところにまで？殺害動機の裏付けのために被疑者の娘さんである大倉奈津さんの事を調べてましてね。
一体どうやってこのかけらが家の中に入ったのでしょう？有村ですか？ええ例えば稽古の最中に靴か洋服か何かに付いたものが山路さんの家ではがれ落ちた。 じゃあ有村と大倉は共犯で山路を殴ったのは有村って事ですか？２人の間に接点は見つかりましたか？いえ今のところまだ何も。 ２月５日２１時過ぎ山路さんと口論になりカッとなって手近なトロフィーをつかんで頭部を殴打した。 まして釣りが趣味でもないあなたにトロフィーの魚がイトウだと断定出来るとは思えません。
見返すには成功した姿を見せるしかない！だからこの舞台は芝居の神様が僕にくれたチャンスなんです！！あなたはその足で歩けるんですか？神様が背中を押してくれますか？歩けるものならその足で舞台まで歩いてご覧なさい！あなたも苦しかったのでしょう。 それ以来稽古でもどうしても殴る事が出来なかった！あの時の…山路を殴った時の鈍い感触が手に残っていて…。 あの夜娘への謝罪記事を書けと有村さんは山路にトロフィーを振り下ろすと…。 現場には有村さんの指紋は１つも残っていませんでした。