定期健診で言われたんだろ?はい特命係神戸です。 「10代で器の会の主宰浅沼幸人に師事」「23歳で第一歌集を発表し一躍歌壇の脚光を浴びる」「その後話題作を続々と発表して受賞歴を重ねる一方小瓶の中身は毒物だったの。 ところでこれはどなたの文箱なのでしょう?これは桐野孝雄という人の文箱でした。 桐野は私が二十歳の学生の頃に結婚を約束した人でした。 コーヒーカップの指紋は?カップにもインスタントコーヒーの瓶にもスプーンにも桐野の指紋しか残っていなかったと聞いたわ。
まあ桐野君と僕はメンバーの中では彼を恨んでいたような人はいませんでしたか?恨んでいた人…?いや彼は素朴な人柄でしたからね私の知る限り彼を恨んでるような人はいませんでしたよ。 では桐野さんの死後高塔さんに言い寄った男性はいませんでしたか?ええいましたよ。 亡くなった桐野孝雄君の事でいらしたそうですが。 実は当時見つからなかった毒の容器がつい最近桐野さんの文箱の二重底から見つかりまして。 桐野君が作った歌をぜひ読んでみてください。
当時桐野さんの周りにはトラブルはなく高塔さんと桐野さんは深く愛し合っていた。 あっ桐野さんが亡くなった時高塔さんはショックで倒れて通夜にも葬儀にも出られなかったそうです。 それは本当ですか?私はショックでお腹にいた桐野の子を流産して入院していたの。 それより青い小瓶の謎少しは解けました?今のところ桐野さんに殺されるような理由は見当たりません。 無論周りの誰も知らないような理由…つまり桐野さんと犯人しか知りえない理由で殺された可能性も否定できません。
帰宅した桐野さんはXに言われたとおりコーヒーにそれを少し入れそれから小瓶を文箱の二重底に隠した。 桐野君の死後彼女はその苦しみをすべて歌に注ぎ込んで圧倒的な才能を開花させた。 虫がいいと思うかもしれないがいつか彼女が真実に気づいた時は甘んじて復讐を受けると決めて生きてきた。 あなたは彼女の復讐を受けるべくここに来ました。 彼女は私に復讐する権利があったんだ。 あの日彼女がしようとしていたのは復讐ではなかったんです。