その時にね警戒警報も空襲警報も鳴らなかったんですよ」「飛行機が来たってわからない？」「何にもない」「エンジンを止めて来てるの」「エンジンを止めてるから落としたあとで初めて爆音がしたんですよ」「ドカーン！ってあとでウー！っていうあの飛行機の音がした」「爆音もしたの…」「それからしばらく経って空襲警報が…一足飛びに警戒警報飛び越えて空襲警報でウーウーウーっていうのが鳴ったのね」「それで…もう生きた空なかったですね」「もう外へ一歩…。
じゃあ本当に…」「老人と子供はもう…命を全うすることはできませんでした」「そんなにたくさん乗ってる人の引き揚げの中でお子さんが一人だったんですか？」「はい」「じゃあ亡くした方たち可哀想でしたね」「でも悲しいという感情が湧いてくるのは内地に引き揚げて帰って普通の生活してからじゃないでしょうか」「そうですってね」「はい」「ですからその時は子供が死んだって可哀想だって言う人もないわよねというのがみんなの合言葉だった」「たかが子供が死んだぐらいで可哀想だって誰も言わないわよねっていうのがみんなの合言葉だったんです
変な格好して”って言ったら“戦争は負けたんです！負けたんです！”って言って叫んでまた自転車へ乗って行っちゃったの」「それで私たち“冗談じゃない”なんて言って顔を見合わせながらね半信半疑で宿屋へ帰ったんですよ」「そしたら宿屋ではきちっと聞こえたらしいのね」「残ってる撮影のスタッフの人たちは」「慰問に加わらなかった人たちね」「その人たちがみんな玄関の前のねラジオの前べちゃーって座ったまんまねピンとこないって感じだったわ本当に」「それでまあ食事はしたんだか何だかそんなこと忘れてしまいましたけど」「夜とにかく１５