おじいちゃんおばあちゃんまだ?今何時?ちょうど品川駅に着いた頃じゃないかしら。 なんで僕の勉強机勇の部屋に入れちゃうんだよ。 昌次から電話あった?いいえまだ。 新幹線遅れさえしなければ年取ったら大変ねこのうちは。 昌次かな?はい平山です。 お父さんたち品川駅に降りるのよ。 あれ?そうだっけ?ああ電話くれた時俺忙しかったからな。 電話鳴っとるど。 大丈夫なの?タクシー乗り場わかるの?誰でもいいから通りすがりの人に尋ねて聞きんさい。 家の近くに来たらもう一回この携帯に電話するんよ。 昌次に電話しなくっちゃ。
まあ夜も勉強?大変じゃね東京の子は。 お前が間違って東京駅なんか行ったから。 新幹線品川に止まるなんて忘れてたんだよ。 タクシー高くついたんだろ?俺送ろうと思って愛車のフィアット出したのに…。 この間仕事場の前に置いといたら「不法投棄禁止」って紙貼られちゃったよ。 今朝何時に出たの?10時のフェリー。 トラックの運転手じゃ。 へえー…あいつがトラックの運転手ね。 友だちの悪口を言える立場か?まず自分が自立した生活が出来るようになってから人の事は言え。 東京で高校の先生やっとったんじゃが去年亡くなってのう。
明後日は日曜日だからまあどこか案内するよ。 イタリアのポンコツ車?じゃあ駅まででいいよ。 今時都心で開業しよう思うたら大変な金がかかるんじゃ。 山田洋次監督作品おはようございます。 10時に宮田さんいらっしゃるからパーマ液トリートメントありで用意しといて。 いいでしょ?お義母さんはいい人なんだけどお義父さんはちょっと苦手だな。 日曜日だから。 アキ!勇うちにいる?パパとドライブ。 平山医院です。 ママ吉沢さんの息子あまりよくないんだよ。 お父さんちょっと心配な患者がいて急に往診に行かなきゃいけないんだ。
それが一生懸命勉強してようやく医学部に入れたんじゃけ。 今夜建て込みの応援に行くから下手すりゃ徹夜かもしれないけど昼間は一応暇だよ。 ああ…そう?じゃあ仕事一段落したらもう一回電話ちょうだい。
手紙でも書いただろ?舞台美術。 例えばパイプだけの抽象的な舞台もやるしそんなら行き当たりばったりの生き方か。 どうするんだい?うちのお客さんで横浜のホテルの支配人の奥さんがいるのよ。 どう?豪華ホテル。 今兄さんと話してたんだけどお父さんとお母さんホテルに泊めてあげようと思うの。 あすこに寝間着があったけ着替えたら?寝間着で飯食いに行っちゃいけんのじゃろう。 お前と2人で映画見に行ったじゃろうが。 ウィーンの遊園地の観覧車の中での芝居が印象的じゃった。 寝間着もきちんと畳んであるわよ。 はあ大丈夫。
ハッハッハッ…。 持ち回りで毎月講習会開いて支度が出来ましたけど…。 沼田君に連絡して服部君のうちに案内してもろうて線香をあげる。 長い教員生活を通して服部君には大変お世話になりました。 勤務評定学力テストお手伝いしなければならんかったとこですが腰の具合が悪うてどうしても来れんかった事を申し訳のう思うとります。 お母さん諦めきれなくて洗濯機パソコン…」実はなおふくろが来るんだって。 間宮紀子。 彼女がね時々来てくれて掃除なんかしてくれるんだよ。 まあボランティアみたいなもんだけどね…。
お聞きしとると息子が大変お世話になっとるようじゃね。 もう小川先生にしつこく絡んでのう。 さあもう一杯思いっきりやろう!なあ平山。 じゃが印刷会社の部長さんじゃろ。 何が部長さんなもんか!まだ係長じゃ。 お前が満足出来にゃ俺は…どうしたらええんか。 ♪~「愛があるから大丈夫なの」ごめんね…。 沼田君もう一杯いくか?しかし平山お前が一番幸せじゃ。 なんで?糟糠の妻を連れて息子や娘の家を泊まりながら東京見物。 そしたら娘も下の息子もあとを追って皆東京へ行ってしもうた。 そうだ!のう沼田君。
昼飯の時にさマスク取ってヘルメット脱いだら黒い髪がぱらりっと落ちたんだよね。 なんて?俺と結婚の約束してくれないか?まあ厚かましい…。 実はね昌次が貧乏してるじゃろと思うて田舎を出る時少しお金を用意して持ってきたの。 あんたはまだ気がついてないかもしれんけど昌次はまるで経済観念ってものがないんよ。 贅沢っていうんじゃないんだけどとっても欲しいものに出会うと後先考えずに大変な借金までして買い込んだりするん。 昌次に言うちゃ駄目よこのお金の事は。
お義母さんは昌次さんところに泊まったんですって?うん狭いとこにね。 一体何があったの?お義母さん。 勇ちゃん元気じゃった?ヘリコプターで遊んどったの?うん。 もしもし救急車お願いします。 母親が階段の途中で倒れて意識がありません。 主人は医者ですがすぐに救急車をと申しております。 誕生日プレゼントは離婚届!?この春妻たちの逆襲が始まる!冗談だろ?本気よ。 今どこなんだ?救急車でね西多摩総合病院。 義兄さんなんて言ってんだ?まさか今日明日ってわけじゃないでしょ。 とにかく私仕事片付けたら病院行くわ。
酸素が下がったら気道確保しますか?それはちょっと相談します。 お店の方?大丈夫。 貸衣装屋で借りれば。 じゃあ明日の朝お鍋温めて味噌入れればええようになっとるからね。 ん?大丈夫かしら?何が?お父さん。 だって新幹線の中でも晩ご飯食べる時でも一言も口きかないんだもん。 それとも私無視されてるのかしら。 兄貴とケンカする度に親父が兄貴に向かってこう言うんだよ。 そういう言い方されるとさまるで自分の存在否定されたような感じになるんだよな子供心にも。
大丈夫なのかしらこんな事で。 職員室でたった一人の独身。 「狂犬病予防注射を全町各所で順次移動しながら実施します」もう少しどう?大丈夫だよ。 この間の血液検査の数字は割によかったから。 あの大島私大好きなんだけどあれ形見にもらっていいかしら?いいだろう。 それから細かい絣の上布お母さんの思い出に大事にしていた着物を欲しいというのがどうしていけないの!欲張りなんだよ姉さんは。 僕たちが気になるのはとりあえず明日からのお父さんの一人暮らしについてなんだ。