始発の旧児島駅から終点の旧下津井駅までおよそ６．３キロ。 事務官としましては赴任された検事に県内のご案内まではいたしますがサイクリングのおつきあいまでは…。 検事と事務官といえども公私混同はいかがなものかと。 あ…申し遅れました私は捜査検事の近松といいます。 捜査検事とは法廷に立つ公判検事とは違い警察から回ってくる事件を調べ起訴の可否を判断する検事のことを申します。 私が赴任する前の事件ですか？１週間ほど前芦田という営業マンが自宅で殺されたんですけど奥さんの兄に嫌疑がかかってるんですよ。
昔傷害事件で服役しています。 細見検事が入院したらしいですよ。 後任の検事が引き継いで書類作って…。 ハァ…あ検事！これほんとに全部読まれるんでございますか？はい。 あのだいたいでよろしいんじゃございませんか？細見検事が起訴とお決めになったんでございますから。 まぁ物的証拠が乏しいという点が気がかりですが寺崎の供述内容そのものに矛盾はないと思います。 細見検事のご意思でもありますし本来ならすぐにも起訴状作成へと進むべきところですが…。
景子を何度も殴ってるのわかってんだよお兄さんはご主人にこれって詐欺みたいなもんだって。 景子さん自分を責めちゃダメ。 事件の日景子さんはずっと工場で仕事をされてたそうですがお忙しいんですね。 この方が事件の日の午後１時半頃この展望台の望遠鏡から失礼ですがあなたは寺崎とはどういう。 前に寺崎さんを介して景子さんに求婚したことがありまして。 お兄さんも景子さんの結婚を心配していらしたらしくご尽力いただいたんですけどやっぱりダメで。 そんな前に数回会っただけの寺崎が望遠鏡で判別できたんですか？できましたよ。
後楽園の鳥居の前にいた寺崎さんが。 実は寺崎の起訴には不安を持っていました。 捜査本部全体が寺崎ホンボシへと傾くのは自然の流れでしたが検事もその点を危惧されていたんですね。 俺が違うってんだから違うんじゃねえの？寺崎この話の意味がわかってるのか？意味？瀬川さんの証言はお前のアリバイの証明なんだぞ。 正直を言えば寺崎と遊ぶより他の仲間と遊びたかった。 その後父の赴任先は山間部へと移り彼との関係を誰にも話さなかったのも捜査に余計な視点が入らぬようにと気遣ったつもりでした。
それから男性との交際は芦田さんだけだったんですか？それが不思議なくらい身持ちのいい子でね。 芦田さんと結婚したのが３年前でしょ。 あぁ検事でございますか？殺された芦田の浮気相手がいるそうなんでございます。 芦田さんの浮気相手ってもしかしてキャバクラ嬢？芦田カモって意味ある？芦田自身に財力はなくても芦田はお前を妙な犯罪組織から足抜けでもさせようとしたのか？アホくさ。 景子：牛窓？明日？フェリー乗り場ね？１１時おかしいなとか思ってその晩芦田カマかけたらしいんだよね。
別れて…別れてください！チクショウ！ふざけんなお前！ふざけんな！景子…景子…捜査にはちゃんと協力してるんですからうちの家庭のことまで話を突っ込まないでください。 景子の不倫の事実突きつけて相手聞き出そうとしたらいきなり殴りかかってきて。 これが落ち着いてられっか！お前らがなモタモタしてっからよあのアホデカが！おとなしくしろ！景子がおかしくなったら売らん言ったら売らんのんじゃ！帰れ！あんたが漁船を持っとってもしようがなかろうが。
景子ちゃんが辞めた後で家内から聞かされただけで。 家内が景子ちゃんと風の道について話してたんだそうですよ。 そしたらコーヒー飲んでた客が寄ってきて「自分も少しだけ下津井を知ってる」って言い出してなんかしばらく景子ちゃんと下津井談義で盛り上がったらしいんです。 前の日の夜？景子ちゃんがいちばん大事にしてる花瓶なんですよ。 頼み？備前焼の花瓶ですか？望遠鏡で見たんですよ。 ええそう思って今管理会社に。 今管理会社の人が来ました。 検事？今部屋入りましたけど景子さんやっぱり留守のようです。
あなたは事件の前日芦田さんに会われている。 景子さんが芦田さんから暴力をふるわれていることを知り彼の会社にのり込み彼を責め景子さんとの離婚まで迫った。 景子にはよそに男がいるんだよ！ウソつけ！また殴るのか！警察行きだぞ！あなたは我々に芦田さんはあなたの傷害事件を知らされぬまま景子さんと結婚したことに腹を立てていたと。 その頃その人物は児島地区の芦田さんの殺害現場にいたのですからね。 違うって言ってるだろ！岡山県警察本部刑事部捜査第一課所属上手うん。