走るぞ～！タイムリミット五日間！時間もないのに美女を助け知恵を絞って八代将軍徳川吉宗様の時代。 大行列を組んで江戸に出仕させた参勤交代は全国の大名家にとって苦行でしたいわば人質にされました。 しかしこたびの参勤交代で我が藩の蓄えもつきました。 これ誰が水を持て！殿！今日より五日のうちに参勤交代せよと上様からのお達しです！なんだと！？我が藩の金山の届出に偽りありとの疑いがかかり信祝湯長谷のこと誠であろうな？ここはひとつ死に物狂いで武士の本分を思い出すのもよろしかろうと思いましてな。
そごだけたっぷりと中間を雇い大名行列の威容を見せれば役人どもの目もごまかせましょう。 おぬしは曲者ではねえというのか？拙者は戸隠流の忍雲隠段蔵。 おぉ！しめて百四十両で済むではねえが！なったな相馬！お待ちくだされ。 これは竹光ではねえが！いがにも真剣では重すぎて道中速く走れねえ。 皆精一杯走るぞ！えっさ！こらさ！さあ高萩宿じゃ！おのおの方気張らぬといかんぞ！はっ！はっ！おっ中間どもがまりいました。 湯長谷藩の行列ですね。
足元のつる草をよく見極めよ！段蔵！速すぎんでねえか？十分に手加減しております。 休むと更につらくなり申すそれそれそれ！それ！それ！いで～！それ～！それ〜！菊千代もそれそれ！それ～うい〜それそれそれ〜！それそれ！それ～！それそれ～！それそれ！お〜いそれそれ〜！それそれ！よ～し獲物を獲れた者は？だらしがないのうほれ！雉か！こんなにが！？いいづの間に？待ってるのが退屈でのう片手間に獲っておった。 わしは雲隠段蔵。
ああ？狼！狼！助けてくれ段蔵殿！何をしてんだお前！早く！後ろ来てるから！助けて！助けてくれ～！！早く来いっての！段蔵殿！段蔵殿！！ほほほ…めんこいのうえっ。 毛皮を取れば五百文になっかのう。 旅の最初に半金。 終わりに残りの半金を払うのが当たり前だがこんなところで全部出すとはの…。 なめんなよ！我らは武芸百般を極めし雄藩。
なぁ足大丈夫か？え？足なもんでやろうこれな大丈夫か？なぁ。 あぁ大丈夫…あぁよしよしよし。 大丈夫だから。 役人様もうおよろしいんじゃないですか？ねぇ！「霞の海よりなお深く」「牛久芸者の深情け」「あ～りゃありゃありゃ」「ありゃありゃさ～」「ありゃありゃありゃありゃありゃ」あはは…。 大丈夫か？ご家老がいねえぞ？え！？神隠しが？いやきっと川ではぐれたのでしょう。 今後中間との交渉は鈴木がせよ。
もしかして生ぎでおられますか？あだりめえだ！はっはっ！大丈夫か？何やつ！わしを内藤政醇と知ってのごどか？我らは公儀隠密。 雲隠段蔵！おぬし牛久でいなくなると…。 磐城平の内藤政樹様。 お刀をお貸しいただげませぬか？おぬしの目は節穴か？行列なら目の前にあるではないが。 武士は相身互いじゃ。 してそれはどごの大名だ？それが仙台藩伊達吉村様の行列にございます！え～っ。 何だど！？六十五万石ではねえが！ご家老行列の前を行がぬど日が暮れてしまいます。 ご家老早ぐ！行列が来ます！うぅ…。
一大事でござる！一大事でござる！姫！琴姫様！一大事でござる！一大事～！それで殿は…兄上はいずこにおわす？途中ではぐれでしまいました。 こうなれば江戸屋敷の者総出で行列を組み殿抜ぎで時を稼ぐしかございませぬ。 おめえら江戸衆がかねの上にあぐらをかぎなめきっていだ小藩の力とくと見よ！や～！相馬頼む。 あ～！秋山無茶するな！拙者とてたまにははめをはずすんだ！うわ～！秋山！拙者にかまわず先を行ってくんちぇえ！段蔵殿！早ぐ行げ。 湯長谷藩ただ今参上いたしました。 湯長谷藩に咎がなかった以上責めですと？はははは…。