背負い小間物の相生屋小四郎がすっかりと 支度を致しまして江戸を発ちまして箱根の山にかかりまして時刻はといいますとまぁ 今の時間で言いますと午後の2時をちょっと 回った時分一生懸命箱根の山を歩いておりますと急にお腹の具合が悪くなってきた。 これは 小四郎 驚きましたよいくら 昼日中といいながら箱根の山の中で「もしもし」と言うんですから亀さんじゃないんですからね「何だろう?」と思って見回してみますと向こうの木の根方に襦袢一枚でもって結わかれている男がいるんでびっくりして…。
で すぐに 死体を引き取りに行かなければならないんですがしかたがないというので大家さんと店請の藤兵衛という人が 2人で小田原の布袋屋へ参りまして 礼を言う。 初七日も過ぎ 二七日も過ぎ今日が 三十五日。 「大家さんは そうは仰いますが家のが亡くなってまだ 三十五日1年は 一人でいたいと思いますけれども」。 確か 神田のほうで二階借りをしていて小四郎さんと同じ背負い小間物をしているというあの三五郎という人確か 身内だという事を耳にしたが」。
「もっとも 考えてみると十万億土という 遠い所から出てきたんだから『やれやれ くたびれたドッコイショ』といって一服してるのに違いがない。 迷わず 成仏しておくれ南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏」。 どうか迷わず 成仏しておくれ南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏」。 「小田原の 布袋屋という宿屋でけどね 大家さんの所へ私は 行こうと思ってたのは旅へ出る前にお前さんに 何て言いました?『留守にするから女房の事を頼む』と言ったんだ。