『若旦那の傍行っちゃいけない』って。 番頭さんが いろいろお小言を申し上げようと思うと『若旦那 お前からいろんな事 聞いてるから肩すかし くっちまうから今日は若旦那の傍 行っちゃいけない』って 『そのかわりお前には50銭 やるから』って フッフッ。 「そしたら 番頭さんが『いっその事 若旦那にお乞食になって頂いたらどうでしょうか』って。
「確かに 私は 若旦那に お乞食になって頂ければよろしいと皆様方にお話を申し上げました。 ですが もし 若旦那が嫌だと仰ったら どうしようかと思案を致しておりましたが今 ご自分から 乞食になるとはっきり 仰いました。 若旦那今日から 向こう 100日の間蔵住まいをして頂きます」。 番頭が 背中をトンと軽く突きますとおこつくように若旦那は 蔵の中へ グズッ。 番頭の言う事を 素直に聞くような こんな若旦那がどうして このような事になったかといいますとその年の正月の 仲間の寄り合いの事でございました。
『あ~ さすがは 若旦那がお見込みになった方だ。 お父っつぁん おっ母さんに挨拶をしまして若旦那 一目散で柳橋へ やって参ります。 『どうしたんだい?』 『今日若旦那と お芝居 見に行くの』『そんな事は分かってるよ。 『若旦那 私との お約束忘れちまったのかしら?』『ばかな事 言っちゃいけないよ。 若旦那が お前との約束忘れる訳 ないじゃないか』その日は 若旦那の事を 2人で言い暮らして 休みました。 若旦那 私との約束忘れちまったのかしら?』『そうじゃないよ。