よく 噺のほうでは江戸っ子なんというものを扱ってございますが今 東京で生っ粋の江戸っ子というのがほとんど いないそうですね絶滅寸前だそうです。 それというのも江戸っ子というのは規約が 大変に厳しく出来ておりまして最低でも二親が 三代 続かないと本当の江戸っ子でないそうですね。 かく申す私も江戸っ子じゃございませんでね親父は代々 東京なんでございますがおふくろが埼玉でございますからいわゆる ハーフでございますね。
そんな事はないでしょう?これだけのね 手広く商売をしてるんですから「いえ。 「フフフ じゃあ 財布見せてごらんなさいよ」。 「お前さんもね無理な事 言っちゃいけないよ。 いや その金が無いってぇとね今日中に私のね男が もう 立たねえんですよ。 無理な事を言ってね昔から 『無い袖 振れない』てぇ事を言うだろ? うん。 私だってね この町内じゃ強情っ張りだ 意地っ張りだって言われてんですからね。 ええ 無利息 無証文でね。
じゃあ 遠慮なく これお借りしときますから」。 ええ? あの人も この町内じゃ強情っ張りだ 意地っ張りだって言われてるけれどもねやっぱり俺には かなわねえな~。 人間というものはね一押し 二押し 三に押し押して押して 押しまくらなくちゃいけねえからな。 あの~ 八五郎さんがお見えになりました」。 遠慮しないで。 ええ?その座布団を当ててな。 「ヘヘヘ どうも。 ご無沙汰ばかりしておりまして」。 無沙汰は互いだよ。
だからさぁあの話をしたんだろ?『自分の心持ちに嘘をついたようになる』」。 やりかねませんからねあの隠居は。 私はね お前さんの心持ちがあまりにも立派だから気に入ったから ね?お金が無いんだよ?それへ 方々 頭を下げて七所回りして頭を下げて この お金をこしらえてきたんだ。 お前さんの心持ちはそれで済むかも分からないがね私の 下げた頭 これどうしてくれるんだい? ええ?私の 下げた頭はどうするんだよ?」。 第一その隠居だって そうだろ?せっかく持ってきたものを受け取らない。
で 『そのうちから 溜まった店賃やなんぞもきれいに払って…』」。 「冗談 言っちゃいけませんよおかみさん。 私は 店賃なんぞね 一つだって滞らせた事はねえんですから」。 「冗談じゃありませんよ。 何だ 一日仕事になっちゃったね~」。 「すぐに 済むかと思ったがね~冗談じゃねえな 全くな〜。 それを 今日は晦日でしょ?返さねえとなるとね自分の心持ちに 嘘をついたような事になりますからそれが 私は もう耐えられねえもんですからねまぁ こうやって持って上がったんですよ。
「ね~ そらぁね返す こっちだって半日でも 一日でも早く 返すから溜飲が下がるんですから」。 意地っ張りだって言われた男ですからねこれ 今日 持って 家へ帰ってね明日 昼過ぎに 出直して来るなんてな事は できませんから。 八っつぁんと 一杯 やるから酒の支度をしておくれ。 今日は 牛肉で お前に一杯 飲ませると…」。 もう 2時間近くも経つよ。 「お父っつぁんじゃないよ お前一体 お使いに 何時間かかってるんだよ? ええ?何をしてるんだ?」。