小さい お店なんでございますが突き当たりにテーブルがありまして一番 店の深い所にで あとは カウンターというようなそんな お店なんでございますけどガラガラッと 開けて 見ましたらもう 既に 一番奥の席は埋まっておりました。 カウンターしか空いてませんでしたんでね「しかたないな~」っちゅうんでカウンターに まずうちの師匠の枝雀が座りました カウンター前に。
師匠命令ってのは聞かなしかたないですから。 さっきから『面白くない 面白くない』て言うてはりましたね?」。 「そうなんだよ俺は 今日は 面白くねえんだ」。 だから 面白かねえの」。 面白くなかった?」。 俺はね 全国 津々浦々行ってるんだよ」ってこう 自慢話が始まったんでございます。 「俺はね 全国津々浦々 行ってるんだよ」。 また うちの師匠はひっくり返るほど 笑いはりましてで 私の袖 引いて「この おじさんな 津々と浦々しか行ってはらへんねや」。
ほな 懐の都合上 その頭だけもろうて帰るわ」。 「そんな 阿呆な事 あんた頭だけ 抜いて 格好悪うて売られしまへんがな。 あっ チョッ チョッ ちょっとあんたの その横に置いてるのそれ それ 何?」。 ね? 頭と 尻尾 真ん中骨だけですねん。 「ただ? ただ?ただか? あっ 私な世の中で 一番好きな言葉やねん「っちゅう事は どういう事?」。 不思議やな ヘヘヘヘ。 あ~ そうか生臭い物 持ってるさかいワンワン ワンワン。
そんなに ワンワン ワンワンばっかり言うてるさかいにいつまでも 犬 やってなあかんのやで あんた」。 ヨットサット エ〜エ〜エ〜ヨット エヘヘエ~エ〜ヨット エヘヘヘヘ これは またこらぁ 立派な鯛やな。 ええ酒 手 回してくるさかいなせやさかい私の酒を 半分お前が飲んでもええさかいその鯛を私に 半分 食わせてくれな? せやさかい 私 今から酒 買うてくるさかいええか? それ 造りにしといてや刺身にしといてや ええか?酒屋へ行てくるさかい な?ちゃんとしといてな 頼むで」。
「さぁ さぁ せやさかいなせやな 何か あっ そう 壺漬け近所から もろうたんやけどな? どう? 漬物 もろたな? 漬物で…」。 「漬物て おい あ~ 難儀やな〜ほんま そんな物もう 頭の中は 鯛になったあんね私は。 ヨッシャ ア~ア〜 アットソットナこ~ら うまい事 いたな〜ええ? な〜 こんなな〜『麦飯で 鯉 釣る』とか 『海老で鯛 釣る』とかいう話 あるけど鯛のアラで 銘酒 釣ったんや」。