この間も 私ね 電車に乗っておったんですけれどもね環状線京橋の駅でございますよ。 そこで 電車に乗るために駅で待ってましたらね私の後ろにですね若い人が来ましてねで 後ろで ズルズルズル ズルズルズルて音 するんでございます。 そこへ環状線 電車が 入ってきました。 その男 ズルズルズル ズルズルズル言わしながら電車に乗ってきよったんです。 その電車の中で ズルズルズルズル 食べとるんでございます。 その井戸側で 最前から ズ~ッと顔 洗うてるの誰や? それ顔 上げなはれ 顔。
「家主の幸兵衛はんっちゅうのはあんたでっか?」。 あのな 豆腐屋さんが借りにきたんやけどうちの町内に 豆腐屋さんはあるかい? ええ?あ~ あ〜 無い? 『皆 隣町まで豆腐 買いに行てる』? フ〜ン。 『あそこへ 豆腐屋さんができたら皆 喜ぶやろ』?あ~ そうかいなそりゃ ちょうど よかった。 豆腐屋さん うちのな 町内に豆腐屋さんは 1軒もないらしい」。 「当たり前やないか 豆腐屋が何で てかけ 妾 持てんねや。
ええ?子供の事を 小伜 ガキそんな事 言うたらいかん。 な?男と女子 夫婦になったら子供 こしらえてそれを大きいして な?一人前にする。 分かりますか?子供さんが おらなんだら他所さんから 養子もらい子をする お方もある。 私がな お尻の大きな子供をな ボンボン ボンボンなんぼでも産む丈夫な女子世話したるさかい。 ええ?何で 家 借りるのに 嫁はんと別れんならんのじゃ?私ら 相惚れでな『一緒になってな豆腐屋 やっていこう』て一生懸命 やっとんのじゃ。
「何? 二十歳? ホオ~ッ お前さんもいや 若うに見えるけれどもそんな大きな伜さんが いてなはる?結構なこっちゃな。 年が二十歳でうん 親のあと 継いで「ハア~ッ なんでございますか?あの家を お借り致しますのに家の伜の顔が関わるのでございますか?」。 あんた所の伜が二十歳。 あっ名前 聞くの 忘れてましたなお前さん所の伜さん 名前何ちゅうのじゃ? ええ?ホオ~ッ ホオ〜ッ世之介? 世之介?悪い名前やな~」。
ヒョイと 顔を上げたら 常々 思てるお向かいの若旦那 世之介はん。 『まあ~ お向かいの若旦那』ってな事を言う。 これを聞いて 世之介がやなああ 白々しい事 言うで。 さぁお花ちゃんも これを受けてやな『世之介さん。 世之介はん。 ほな 世之介さん 家へ養子に来てもらおうか』とこういう事になりますわな?」。 「えらい 話が トントン トントン進んどりますけどねいや いやそりゃ 結構でございます。