ダニエル・エヴェレットのかつての使命はピダハンの人々にキリストの教えをもたらす事でした。 ところがピダハンの満ち足りた世界を知りダニエルの信仰は揺らぎます。 ピダハンの言葉にはあらゆる言語に存在するはずの文法上の法則が欠けているというのです。 今 ダニエルは新たな使命を帯びてピダハンの村に向かおうとしています。 南米ブラジルアマゾン川流域の密林にピダハンと呼ばれる 400人ほどの人々が暮らしています。
ダニエルは たった一人のピダハンもキリスト教に導く事はできませんでした。 ダニエルは伝道生活を捨て言語学者としての仕事に没頭し始めました。 彼は長い事 ピダハン語の文法には他の言語とは根本的に違う何かがあるのではないかとノーム・チョムスキーは 言語学の世界で最も影響力を持った学者です。 問題の言語を ただ一人知っているという男がジャングルから出てきて言語学の権威が唱える 最も重要な理論が間違いだと言ったからです。
これは チョムスキーが唱え 言語学界の定説となっている理論「普遍文法」の最も重要な部分なのです。 普遍文法は 言語学界で50年以上にわたって支持されてきました。 私が提唱する 普遍文法とは言語能力は 人間に遺伝的に備わっているとするものです。 もし ダニエルが言うようにピダハン語にリカージョンがないとすれば普遍文法の理論が間違っているという事になります。 ピダハン語にリカージョンが欠けているなら人間の言語にとって 普遍的な根本原理はないのかもしれません。
ブラジルの先住民を保護するための機関は 「FUNAI」と呼ばれます。 ブラジル中西部にある FUNAIの地域事務所に向かっています。 2~3年前にアメリカの言語学者たち数人がFUNAIに手紙を書いたんです。 ダニエルが ピダハンの村に立ち入れないように彼に批判的な言語学者たちがFUNAIに訴えたんです。 ダニエルたちによる遠征調査は却下されましたがFUNAIは 撮影班が再び村に入る事は許可しました。 ダニエルは ピダハンの人々に向けたメッセージを撮影班に託します。