私 手塚治虫のこと よく知らないんですから。 いや 情熱って言われても正直 あんまり ピンとこないんですよね漫画雑誌の編集って。 あん？だって 漫画が ヒットするかどうかなんて漫画家のセンスしだい じゃないですか。 いいもの描けるように 漫画家に寄り添うのが俺ら 編集の仕事だろ。 アッチョンブリケ！石坂さん？あれ？誰か いませんか？あれ？ 携帯…。 手塚治虫先生のこと 知らないのかよ。 手塚治虫！？そうですけど。 うちの「チャンピオン」で。 担当ですか？「チャンピオン」で全４回の連載だ。
赤城さん？うん？ちょっと よくわからないんですけど連載で４回って 少なくないですか？手塚先生って 大人気なんじゃ…。 手塚先生の 死に水を取るつもりだろ壁村編集長は。 少年漫画では ヒットに恵まれず漫画以上に情熱を注いでいた アニメは経営的に大失敗。 梅谷氏 「チャンピオン」で 連載が決まりました。 ほら 手塚先生のタッチって 絵が丸いだろ？今は 劇画とか そういう漫画も どんどん出てきてるわけだし。 お前らな 手塚の新連載 気合い入れて 取り組めよ。 小田町氏 どうかしましたか？へっ？ あっ いや…。
小田町氏は？どうした？面白いです すごく。 前に見たって いつ見たんだよ？ こうして手塚治虫の医療漫画 「ブラック・ジャック」は産声を上げました。 「ブラック・ジャック」の次の原稿 まだか？あぁ～ 今から すぐに。 「ブラック・ジャック」は？ちょうだい。 「ブラック・ジャック」 見つけろ～。 これ全部 「ブラック・ジャック」の ファンレターですか？はい。 「ブラック・ジャック」 好調で何よりです。 「ブラック・ジャック」 面白いですか？当然でしょ。
手塚治虫の作品を 世に出すために 編集者も死に物狂いにならなければ ならない ということを。 はい？今回の「ブラック・ジャック」 どうですか？へっ？面白いですよ もちろん。 あなたは どう思いますか？今回ですか？ う～ん…あの… この状況って？先生 これ ２０ページまるまる さっきと別の ツ―ツ― このとき 少なくとも この場にいる誰一人８時間で原稿が完成するなんて 信じていませんでした。 私は そのとき手塚治虫の 驚異的な集中力と共にどんな状況でも 一切妥協を 許さない姿勢を知ったのです。
手塚先生！手塚先生！どうしました？ 小田町氏。 うん？今すぐ 「ブラックジャック」にかかってもらわないと 間に合わないんです！困るんです！ですから…。 梅谷氏 急に 小田町氏がですね…。 小田町氏…。 小田町氏。 思いつきましたよ 小田町氏。 「ブラック・ジャック」のアイデアもう１つ 思いついたんです。 待っててください 「ブラック・ジャック」の読み切り必ず 最高の原稿 仕上げますから。
そんな疑問は吹き飛んでいて そのときは ただ梅谷氏 アニメをやります！えっ？アニメです アニメ。 世界初の ２時間テレビアニメですよ。 手塚先生急に アニメやるって 言いだしちゃって。 もうアニメは やらないから 大丈夫です。 あぁ あぁ ちょうど良かった この水島君がアニメのほうの制作進行だから スケジュールは彼と確認し合って。 はい？高田馬場の カップうどんじゃなくて下北沢のカップうどんが 食べたいんです。 おかしいだろ？ 仕方ないから下北沢まで買いにいったよ カップうどん。
えっ ちょ… 手塚先生！み… 見逃してください。 あの でも本当に大丈夫なんですか？何がですか？いやそんなに たくさん仕事抱えて。 さっき アニメスタジオに 行ってきたんですけどね。 手塚先生の絵コンテが 来ないんだから当たり前だろうが。 アニメ部には 全然 絵が入ってこないし…漫画部のほうばっかり 仕事優先してるんじゃないですか？いやいや いや… こっちも 締め切り ぎりっぎりなんだから。 手塚先生！２番目に現場を把握してるのは 誰ですか？２番目？２番目っていえば…。
これ 練馬のスタジオ 大至急。 スタッフ一同 とにかく できることから仕上げようと夜討ち朝駆けで働き…。 手塚先生 何が気に入らないんですかね？あのアニメ ブラック・ジャックが登場するんだけどその登場シーンが リテークの嵐なんだって。 あの能天気で自分勝手な 天才漫画家に。 そして それに付き従っていられるスタッフたちにも。 しぃ～！えっ？アニメの仕事を引き受け スタッフに逃げられても諦めず１人で全部やろうとして 更に状況を悪くし。 手塚先生。