キャッ!アキーッ!アキーッ!怪我は?お前か見よこの傷を!姫ーっ!姫ーっ!姫!いかがなされましたこの者がわらわを馬から落としたのじゃ!なにっ何奴だ!このお方が大田原藩主ご息女香苗様と知っての振る舞いか!いえお侍様はうちの子が危うく馬に蹴られるのをお助けくださいまして。 おのれ!わらわに意見致すか!姫!あれは小郡長助にございます。 小郡長助この苦難を乗り越えたい一心でお話し申しました。
あれは…!昨日わらわに無礼を働いた子連れの浪人者じゃ!うむ…。 今どき左様な作法を心得たるはその方いかなる素性の者じゃ?刀を帯びたる浪人者を護衛につけたるは遺憾に思う。 ではなんのための介添えじゃ?もし私がこの場にて死ぬるようなことがあった場合事の次第を見届け皆に伝えてもらうためでございまする。 外記!この者らの言い分を聞き入れるつもりかそれでは領民に屈することになる!姫拙者にも考えあってのこと。 あれなる浪人者の差料胴太貫に相違ない。
あの浪人者介添えを致したのが金目当てならともかく領民たちに左様な金が払えるとは到底考えられませぬ。 油断させて近づきわらわが彼奴を射止める!そうなったら一同ただちに飛び出し領民どもを取り押さえるのじゃ!おうっ!貴殿は大丈夫と申されたが一人にされて不安に思わぬ子はありませぬ。