西村京太郎トラベルミステリー55 寝台特急カシオペア殺人事件

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今度お台場に出来る事になったオペラハウスご存じですか?ええ。 で十津川さんはどんなお仕事を?あ…地方公務員です。 地方公務員?学校の先生…あ!校長先生そうでしょう?ええ…まあ…。 ねえ校長先生もしよかったら明日の函館ご一緒しません?こうして出会えたのも何かのご縁ですし…。 今函館署の方に連絡を取りますんで。 もしもし…ああ函館署ですか?今排水場で男性の死体が発見されまして…。

警部は一応函館署に別所の事は知らせたみたいだが旅行中の警部や奥さんに何もなければいいがね…。 じゃあ帰りのカシオペアで。 あなたあの人の事疑ってるでしょ?あの人!あの人よ!函館の市場で大山さんと話してた人。

「1番乗り場の上野行き寝台特急カシオペアまもなく発車致します。 助けてあげられるかな」…!直子待て!止まれ!奥さん…!十津川さん助けてください!刑事さんなんでしょ!?うちの人がうちの人が…!これは…!「十津川という男は刑事だ」「夫の命を助けたければ1号車のゴミ箱を探せ」改札口へ走れ。

伊沙子…!彼女だったんですか殺された女性っていうのは!伊沙子?姓はなんていうんですか?いや姓まではわかりません。 昔私の事務所にいてクビにした館山義男という男です。 1年前までね大山さんの設計事務所で働いていたんだそうですけどもねその建築設計料を水増ししてお客さんに請求してるんでクビにしたんだそうですよ。 よしまずは館山義男の家宅捜索から始めてくれ。 木下伊沙子34歳。 「Y.TATEYAMA」…館山義男。

しかしなぜ木下伊沙子の殺害現場に別所透の指紋のついた缶コーヒーの空き缶があったんでしょう?恨まれていてで何かをされたんで殺害をした。 しかし館山義男が殺害された時刻私と家内は大山さん夫婦と一緒にいてそれも北海道旅行で一緒だった簑島絵里という女性とです。 別所透が簑島絵里を連れて歩いていたら今度の結婚詐欺のターゲットはこの金持ち女だって館山義男ピーンときちゃいますね。 別所透が結婚詐欺師で人を殺した事もあるなんて簑島絵里が知ったら当然結婚は御破算でしょうしね。

それで君は簑島絵里さんをだました。 それより5日前の函館でのお昼前後の君の行動を全部話してくれたまえ。 それにこの木下伊沙子をカシオペアの中で殺害するために家内を誘拐し私を函館駅で降ろしたというのはわかる。 しかしなぜ家内を函館の丘の上から突き飛ばす必要がある?それは警部への逆恨みかそれか奥様に怪我を負わせてカシオペアに乗せまいと考えたからじゃないでしょうか?とにかく警部別所の周辺洗わせてください。 それと木下伊沙子が札幌駅で声をかけていた若い女性。

ん?ああ!この男中島雅彦だ。 この中島雅彦は元財務官僚でねそりゃ県会議員なんですけどおやじはね。 中島雅彦は不倫旅行であのカシオペアに乗った。 いやあ現職国会議員の不倫旅行これ大スキャンダルになりますよ。 館山が脅していた相手というのは中島雅彦っていう事ですか?そして館山は中島雅彦を脅し殺されてしまった。 で別所はこの館山とそれから木下伊沙子を殺したのは中島雅彦と夏山未奈だっていう事を知ってあの埠頭に呼び出したんだ…。 とにかく中島雅彦とこの夏山未奈という女性呼ぼう。

別所にゆすられた事は認めてるんですし何より中島雅彦には館山義男や木下伊沙子を殺す動機があります!私をカシオペアから降ろす理由がわからない。 別所の警部に対する単なる嫌がらせなんじゃないですかね?しかしそのために大山さんまで誘拐するかね?あれはどうしても私をカシオペアから降ろし木下伊沙子を殺害するための手立てだったとしか私には思えないんだ…。 大山さんの事を調べる?函館から小樽カシオペアと同じルートをたどっていたのは別所だけじゃない。

でもヤナギダグループのオペラハウスのコンペを勝ち取った事で次から次へと仕事がくるようになりましてまあ近い将来もう少し広いところに引っ越さなきゃいけないなあとは思ってるんですけどね。 建築家の世界というのは想像以上に保守的な世界でして名のある建築家にしかあんな大きな仕事はとれないんです。 ところで犯人に捕らわれてる時の事で何か思い出したような事は…?確かに大山先生の作品がうちのコンペで選ばれたというのは建築家の世界では奇跡に等しいでしょうね。

住まいは都内を転々としましてね母親一人で苦労して育てたんだそうですよ。 あのねそうしたら中にオペラハウスのね新聞に載った写真とか雑誌に載った写真の切り抜きが大山茂さんのお母さんじゃないんですか?やっぱりそうですか。 私は母親なんて名乗る資格のない人間なんです。 あのつかぬ事をお尋ねしますがね大山茂さんは最近お墓参りへいらっしゃいました?ああ…失礼しました。 墓掃除に時折来るのはあの息子の母親だけです。 ああ…ここで病気がちだった母親が大山茂さんを育てていたんですね。 大丈夫?お母ちゃん。 大丈夫よ大丈夫。

木下伊沙子の行きつけの寿司屋の主人の話によりますとなんと木下伊沙子が連れてきた建築家のフィアンセというのは館山義男じゃないようなんですよね。 えっオペラハウス?警部…!間違いありません。 私は木下伊沙子さんと以前付き合っていました。 ひょっとしてあなたはあの日小樽の港で木下伊沙子さんと待ち合わせしていたんじゃありませんか?いいえ私は…。 顔見知りだっていう事かい?いやいやアキさんの方はたとえ知らなくても木下伊沙子は絶対知ってますね。

つまり木下伊沙子の部屋で我々が発見したあの館山義男の設計図。 あれは木下伊沙子の身元が判明する前に大山アキが置いたんだ。 それを利用して大山茂とアキは木下伊沙子と館山義男が恋人同士だと見せかけた。 それが一体どういう関係があるんです?あなたのご亭主の大山茂さんが最初に付き合っていた女性が木下伊沙子さんだったんですね?伊沙子に言われたんだ。 ご主人は木下伊沙子にはあなたを殺すと言いながら本当は人目につかないところで自殺に見せかけて木下伊沙子を殺すつもりだった。

なるだけオペラハウスの建設に支障をきたさないよう俺はストーカーに殺された被害者として死んでいくよ。 君とあのオペラハウスは僕の宝物だ。 死になさい!やめろ!ここから飛び込むのよ!お前は鬼か!?自分の腹を痛めた子供をどこかの男と一緒に暮らしたいから殺すなんてお前人間じゃない!泣くな茂!伯父さんがいるから大丈夫だ。 お前を死なせない!大丈夫だ。 茂泣くな大丈夫だ。 茂大丈夫だ…。 あなた!お義母さん!あぁ茂…!西本どうしたの?おふくろの…大丈夫か?あっ冷たい!冷たい…。