領民積金に関する書類一式焼け申した。 何?領民積金の書類一式が…?…え?や~り〜!いや~随分ちっちゃいおじいちゃんだなおい。 十日以内に受け取りを持参した者には十年前の約束どおり元金に三分の利息をつけて金は返す。 領民積金というのは…?今から十年前藩の借金を返すためにこの蚊帳やちりめんなどの特産品を手広く売り出す事になりました。 殿様は当時まだ八歳でお母上の白秋院様が自ら領内を回られ頭を下げられました。 そうだ白秋院様にお願いしよう!そうだ。 十年前先の殿がご逝去された後白秋院と号して尼になりました。
じゃあ月影の旦那は泣く泣く…?泣いたかどうかは存じませぬ!でも剣の師であるお喜和様のお父上も兵庫殿がここに長居すれば…ほれあの…なんての?下世話に申す…!「焼け木杭に火が付く」!そうそう!旦那を連れてお暇しましょう!一刻も早く!そうです一刻も早く!うん!兵庫様積もる話はございますがあいにく…。 お前の姉を殿の側室に迎える代償として名も無き父を藩の師範代に据えてやった恩を忘れたか!?だがお前はどうだ?ん…?白秋院様は?それが…月影兵庫なる素浪人に邪魔されました。
月影兵庫神妙に縛につけ。 てっ鉄砲隊ですよ!兵庫殿!なんかの間違い。 吐いたか?お主…確か江戸留守居役の…。 月影兵庫。 二人…二人先行け!なーにバカな事言ってんだよ。 半次さん庵主様に渡しておくれ。 白秋院様!どうなされた?見覚えございませんか?どこでこれを?湖畔です。 ごご城代にお知らせを!ハッ!領民積金の控えを盗み出し琵琶湖湖畔で焼却した顛末証拠の品とともに殿にお知らせした。 月影兵庫様の身柄をおとなしく引き渡しなさい。 月影兵庫…。 兵庫殿と…姉上を引き裂いてまで守った家名にございます。