そなた小石川養生所に入っていたのではありませぬか?はいところがお役人様からもう全治したゆえ退所せよと申し渡されまして…ごめんくださいまし。 医療を受けられぬ貧しい人々を無料で診療することを目的としこのころ江戸庶民にとってなくてはならぬ巨大な病院に成長していた植木職人・与吉!元大工・吾作!以上七名の者は病状回復せるをもって養生所より退去を申しつける!即刻荷物をまとめろ!旦那!確かに回復には向かっておりますがご覧のとおりあっしらはまだ本復にはほど遠い病人なんで…。
患者の収容施設にまだ余裕があるのに無理に患者を家に連れ戻すことなどないのです!そうですか…母上はそこに曰くがあると?いずれにしても患者が完全に完治するまで留め置くのが医者の務めでしょう!あ~っ!お由利さん見いつけた見いつけた〜!そなたが悪いのですもう…!まさか…かくれんぼを?さあお由利さん今度はあんたが鬼の番だよ。 一二三四五六七八九十!おふさ殿…昨夜思い切って二人の祝言のこと笙船先生に相談しました。
何…篠田の後ろに西条藩の江戸家老が?両人は一年がかりの薬がようやく完成したと大喜びでした。 一年がかりの薬…?皐月…篠田の身元は知れたか?はい篠田道庵は貧しい御家人の三男ですが医学の道を志しその秀才ぶりを認められ幕府の費用で長崎へ留学…五年で江戸に戻り医者として仕官の道を志していましたが貧しい暮らしは変わらず…。 はい一年前藤川主水正の強い推挙で西条藩のご典医となり志願して無給で養生所へと…。 ところで篠田道庵があの研鑽所の中で何の薬を作っているかご存じありませんか?いいえ…。