名古屋城は徳川御三家筆頭尾張六十二万石大納言・徳川宗春の居城である不必要にしとうございます。 ♪~敗北の無念と屈辱に錯乱し自刃して果てたその命日に当たるこの日宗春は終日先祖の霊を祀る霊安堂にこもり「打倒吉宗」を祈念するのが習わしとなっていた江戸家老・成沢内善正様より火急の書状にございます。 織部っ!ただちに江戸表に馬をとばし吉宗暗殺の指揮をとれ!ははっ!ああ。 宗春様のご落胤南町奉行・大岡忠相である!ただの辻斬りではあるまい。
なにっ市ヶ谷の尾張藩上屋敷じゃと?はい。 御宗家である上様に刃を向けるとは言語道断!ただちに厳重なる処置を!さりながら彼らが襲いしは一介の旗本・徳田新之助。 上様…!俺が八代就任以来しこりとなっておる幕府と尾張の暗闘はもう終わりにせねばならぬ。 尾張対幕府最後の決戦の火蓋はすでに切って落とされた!上様~っ上様はいずれに星野織部が江戸に来ておると?はい。 尾張様には十数年前芸者に生ませたご落胤があり行方知れずのその娘を藩士たちが探しているとか…。
吉宗襲撃失敗の一件は織部から聞いた。 吉宗打倒までは未だ正室を迎えぬこの余の殿。 尾張六十二万石の衆望を担って天下人の座に就かんとする宗春公にございますぞ。 吉宗を倒すまでは決して尾張には戻らぬ覚悟でそれにしても不思議な縁よのう…。 千載一遇の好機!ここで吉宗めを…!あのお方は由緒ある武門のお方だ。 さらに江戸城を取り囲むように神田京橋虎ノ門四谷九段とはい。