情けねえ…それでも将軍様の剣道指南役かいこりゃあ柳生はひょっとしたらお役御免だぜ！さあ買った！心中事件だ！さあ買った買った何を夢中で見てるんです？いえ別に…。 何を見ているのです勉強勉強！高田殿は心中を遂げるような御仁ではござらぬ！此度の一件は明らかに我が柳生の面目失墜を狙った何者かの陰謀！その見当もついておる。 柳生の隆盛を妬む小野一門の仕業だ！小野だと！確かなことか？小野一門の“てだれ”といえば…。 大岡殿…同じ将軍家剣道指南役ながら我ら小野一門はとかく不遇をかこってきた…。
まあ…！鶴姫様！兵庫殿…！ご無沙汰いたしております。 六年前確かに鶴姫様は兵庫殿から剣術を教わっておりました。 〔本日はこれまでといたす〕〔嫌じゃ！わらわは兵庫殿に勝つまでやめぬ！〕〔姫…無茶ですぞ！〕〔嫌じゃ嫌じゃ！勝つまでやめぬのだ！〕〔子供のようですな〕教え教えられるうちいつか二人の間に恋心が生まれていったのでございます…。 兵庫殿から剣道指南を辞退する旨の手紙がそのようなことがあったのか…。
半平太…！どうでも果たし合いに及ぶというのか？〔あなた…〕先日鶴姫様と一緒だった…いったいそこもとは何者なのだ？兵庫…我孫子との試合を避けたお前がなぜ半平太と立ち合った？はい…！六年前のことでございます。 私と鶴姫様のことを知った半平太は鶴姫様の婿にふさわしいのは自分だと言ったうえに井伊家に取り入る柳生のなまくら剣法と〔兵庫貴様が死ねば柳生の剣は途絶える。